Gemini3.0の性能論考と今後のAI活用のメモ
- 雅人 土佐
- 3 日前
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2025年11月、Googleから最新のLLMモデルGemini 3.0(および関連するPro/Deep Thinkモデル)が公開されました。ChatGPT / Claude / Gemini ... etc、AIの論理推論能力(IQ的側面)は「人間を超える」領域に足を踏み入れています。ざっくりと調査した内容を記載しますので参考になれば幸いです。
性能エビデンス(ベンチマークテスト)
評価項目 (ベンチマーク) | Gemini 3.0 Pro | GPT-5.1 (OpenAI) | Claude 4.5 Sonnet (Anthropic) | 勝敗・備考 |
① 超難関推論 (Humanity's Last Exam) | 37.5% (Deep Think: 41.0%) | 26.5% | 13.7% | 圧倒的優位 人類の難問に対し、他社を10pt以上引き離す。 |
② 専門的科学知識 (GPQA Diamond) | 91.9% | 88.1% | 83.4% | 優位 PhDレベルの科学知識でトップ。 |
③ 実践コーディング (LiveCodeBench Elo) | 2,439 | 2,243 | 1,418 | 圧倒的優位 エンジニアリング能力で明確な差。 |
④ 数学 (競技レベル) (MathArena Apex) | 23.4% | 1.0% | 1.6% | 独走状態 複雑な数学的思考において他社モデルは苦戦。 |
⑤ マルチモーダル (MMMU-Pro) | 81.0% | 76.0% | 68.0% | 優位 画像・動画を含む理解力でリード。 |
領域別詳細分析の説明
1. 推論・思考能力 (The Reasoning Gap)
「Humanity's Last Exam」 は、従来のモデルでは回答不能な難問を集めたベンチマークですが、ここでGemini 3.0はGPT-5.1に対して約1.4倍のスコアを記録しています。
Deep Thinkモード: Gemini 3.0に搭載された「Deep Think(思考プロセス強化)」モードを使用すると、スコアはさらに41.0%まで伸びます。これは、単なる知識検索ではなく、AIが自律的に論理を組み立て直す能力(IQ的側面)において、Geminiが一歩先の世代に入ったことを示唆しています。
2. コーディング・エンジニアリング (The Coding Gap)
LiveCodeBench は、学習データに含まれにくい「最新の未知の問題」に対するコード生成能力を測ります。
Claudeシリーズはこれまでコーディングに定評がありましたが、今回のデータでは Gemini 3.0 (Elo 2439) が Claude 4.5 Sonnet (Elo 1418) を大きく突き放しました。
これは、Geminiが単なるスニペット生成ツールから、「複雑なシステム全体を設計・実装できるエンジニア」へと進化したことを意味します。
3. 数学・論理パズル (The Logic Gap)
MathArena Apex の結果は衝撃的です。GPT-5.1やClaude 4.5が 1%台 に留まる中、Gemini 3.0は 23.4% を記録しました。
これは「計算」ではなく「数学的ひらめき」や「複雑な証明」を必要とする領域での強さを示しており、金融分析や科学研究などの高度な論理的整合性が求められるタスクでの信頼性が極めて高いことを裏付けています。
IQからEQへ ― エンジニアの働き方の変遷
Gemini 3.0のようなAIが論理的知能(IQ)の領域で人間を凌駕し始めた今、私たちが価値を発揮できる領域は「感情知能(EQ)」へと大きくシフトしています。
変遷の全体像
領域 | 従来の働き方 (IQ重視) | これからの働き方 (EQメイン) |
価値の源泉 | 正確な情報処理、論理的思考、知識量 | 共感、動機付け、倫理的判断、心理的安全性 |
役割 | プレイヤー(自ら手を動かし正解を作る) | コンダクター(AIと人を指揮し調和を作る) |
対人関係 | タスクベースの管理・指示 | 信頼ベースの交渉・ファシリテーション |
スキル | 高度な計算、コーディング、記憶力 | 「問い」を立てる力、ストーリーテリング |
なぜ「EQ(心の知能指数)」なのか?
AIは「論理的に正しい答え(正解)」を出すことは得意ですが、「納得解(みんなが動きたくなる答え)」を作ることは苦手です。ビジネスは論理だけでは動きません。人の感情、政治的背景、暗黙の文脈を読み解き、ステークホルダーを動かす力こそが、これからのエンジニアの核心的価値となります。
新時代に求められる「心構え(マインドセット)」
Gemini 3.0時代を生き抜くための、3つの心構えを提言します。
1. 「正解」はAIに任せ、「決断」に責任を持つ
調査、分析、論理構築はAIが秒単位で行います。人間は、AIが出した複数の選択肢の中から、「企業の文化、倫理観、その場の空気感」に照らし合わせて最終的なGoサインを出すことに集中してください。「なぜそれを選んだか」というストーリーを語る力が求められます。
2. 心理的安全性のクリエイターになる
AIが業務効率を極限まで高める中で、チームメンバー(人間)が感じる疎外感やプレッシャーをケアする能力が不可欠です。
「AIがすごい」ではなく「AIを使って成果を出したあなたがすごい」と言えるか。
対話を通じて、メンバーのモチベーションをデザインできるか。
これらはAIには代替できない、高度なEQスキルです。
3. ドライな知性(IQ)と、ウェットな感性(EQ)のハイブリッド
AIを敵対視するのではなく、「最強の左脳(IQ)」としてGemini 3.0を使い倒し、自分は「最強の右脳・心臓(EQ)」として振る舞うイメージを持ってください。
どんなにAIが進化しても、「あなたと一緒に働きたい」と思わせる人間的魅力(愛嬌、誠実さ、熱量)は、最大の武器であり続けます。
あなたができる最初の一歩
Gemini 3.0の性能を体感しつつ、自身の働き方をアップデートするために、まずは以下の小さなアクションから始めてみませんか?
「直近で抱えている『正解のない悩み(人間関係やキャリアの迷いなど)』について、あえてAIに壁打ち相手になってもらい、その回答に対して『自分がどう感情的に反応したか』を観察してみてください。」
AIの論理に対して、自分が何に違和感を持ち、何に共感したか。その「感情の揺らぎ」の中にこそ、AIにはないあなただけの価値(EQの種)が眠っています。


